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2009.11.10

The Valley days 09. 【Drive On】

Drive On

そのラインの存在を知ったのは3年前のこと。

ヨセミテの新しいトポ「YOSEMITE VALLEY BOULDERING」が発売され、早速購入してページをめくる。新しいエリアや課題が紹介されていて、写真も多かった。
手がとまり、目が釘付けなったのは83ページ。
Randy Puro氏が美しいフェイスを登る姿に目を奪われた。
キャプションの課題名には【Drive On】とあった。

Dotopo_5

これを登りたい。

次は、「Dosage V」を見たとき。
冒頭の「The Valley」で、美しい光線のなかRandy Puro氏が【Drive On】を登る姿は本当かっこよかった。そのときグレードはV11と紹介されていた。

この美しいラインを登りたい。
その思いはどんどん強さを増していた。

昨年、念願かなって【Drive On】をトライするチャンスを得た。

ハードだった。
ほんのちょっとでも気を弛めるとホールドからは指が吐き出され、わずかにホールドとの接触点がずれるだけで次のムーブが起こせなくなる。激しいクリンプで指皮の消耗が驚くほど早い。

そしてなにより楽しかった。
初日に下部のムーブを解決し、残す上部も何とかなりそうな感覚があった。

2日目。
気温が高く、初日の高度に達することもできず敗退。岩のコンディション優先だと知った。


それから1年経って、僕はまた【Drive On】の前にいる。




10/29

気温は先日より若干高め。
先日のトライでぶり返した左手薬指の痛み。
左膝は相変わらず、むしろ悪化傾向。
指皮は1日のレストでは回復しきってない。


焦りはなかった。
気負いすぎてもいなかった。
先日のトライで、結果を焦り、視野を狭くし、入れ込みすぎた状態とはまったく違っていた。

不安がないわけではない。
ただ現実をそのまま受け入れて、その上で何ができるか。
どうすればベストをつくせるのか。
どうすればそのラインに心と身体をフィットさせることができるのか。
それだけを一昨日のトライ以降考え続けていた。


今日は集中していた。
その日の最初のトライから、硬さは無く、自然だったと思う。
いつも通りの自分の動き。
集中することでのみ得られるリラックス。

【Drive On】に取り付くことが、ホールドに触れることが、ムーブを起こすことが、ブラッシングすることが、タクティクスを練ることが、楽しかった。

何度かトライしているうちに核心のホールディングの感覚がつかめてきた。
足の踏み替えもできた。
ラインと自分自身のピントがだんだんと重なってきてるのを感じる。
それでも僅かにずれたホールディングをしてしまい、指が弾かれる。
岩に熱を奪われ、足指の感覚が鈍い。シューズが冷たい。

「ちょっとレストします」

シューズが冷たいと言ったら、重ね着しすぎでトドみたいになったザクが「じゃーオバちゃんが暖めてあげるよ」と言って、そのダウンジャケットの中にシューズを入れてくれた。

その言葉に素直にしたがった自分自身がすこし不思議だった。
普段の僕なら、いらねーよ、自分でやるよって言ってるだろうな。
そんなこと考えながらあたりを歩いて、日光を浴びて身体を暖める。
ハーフドームを眺めて、ワシントンコラム直下の岩塔を見上げる。

ああ、なんて楽しいんだろう。
早く次のトライがしたい。
【Drive On】の前に戻り、目でラインをたどる。

Dof

あ…次、登れる。。。

そんな予感めいたもので胸がいっぱいになり、レストを終えてトライの準備を始める。
ザクが暖めてくれたシューズを履いて、チョークを手にまぶす。

Doraさんにスポットしてもらい、トライ。

スタートホールドから丁寧に指先を合わせ、身体を浮かせた。
1手目をちゃんと握りこみ、ヒールフックをかける。
痛い、けれどムーブを起こす。
核心の手前。ここでミスすれば核心をこなすことは出来ない。
ノーミスでクリア。
中継カチを使って身体を引き上げる。
完璧なバランスを作って、スタティックに核心のエッジを捕らえる。
ゆっくり、僅かのズレもないように指先を合わせてから握りこむ。

いける。

次のムーブも腰を沈めバランスを崩すことなくこなし、一番苦労した足の踏み替えもできた。
適度に暖めたシューズのつま先は、小さなフットホールドを的確に捕らえてくれる。
右手をガストンに飛ばしてここも完璧なポイントに指を収める。
左足に乗り込む。
これまで2度、ここで身体を剥がされたけど、今度はバランスを崩される気配なんてどこにもなかった。
左手が初めてそのエッジをつかむ。

予定ではそのエッジを取ったら、足を踏み替えてリップにランジするつもりだったけど、後から動画を見直すと、一度リップの距離を確認して再度左手を送ってから(声が漏れているところみるとここも楽ではなかったみたい)リップを掴んでいる。
どうも身体が反射的に対応してムーブを切り替えていたみたいで、このムーブは曖昧にしか覚えていない。

リップを掴んでからの記憶は鮮明だ。
なかなか返せなかったから。

ホントに危なかった。
マントルのためのヒールフックを掛けるところが手より奥で、なおかつ腕は疲労でガチガチ。

下からのみんなの声援。パッドを移動させる音。

1回で返せないのを悟って、一瞬右手をシェイクして、もう一度。
少しずつ身体をリップの向う側に押し込んで、何とか乗り上がる。

両足が岩の上を踏んだとき、僕は喜びの声を上げていた。



【Drive On】をトップアウトして、みんなの顔が見えるところにへたり込む。
息は上がり、記憶は混乱して、ただとても興奮していた。

Dodone_2
トップアウト直後。

自分自身の心の弱さを思い知った一昨日。
何をすべきかひとりで考えた昨日。
シンプルに登ることを楽しめた今日。

だけど楽しむだけじゃ、集中するだけじゃ、リラックスするだけじゃ登れなかった。

みんなが毎日いつも通りにかけてくれた言葉。
みんなの声とスポット。
ひとりじゃないと感じた時に出せる力ってあるんだと思った。
僕ひとりだけで登れたわけじゃない。
みんなのおかげで登れた。


本当にありがとう。


6年ちょっと前。
【Midnight Lightning】はひとりだった。
自分自身を信じることで力を出して、登りきれたことが嬉しかった。


そして今。
【Drive On】はひとりじゃなかった。
登れたことだけじゃなくて、ひとりじゃなかったことが嬉しくてたまらなかった。




その夜、Camp4の星空の下、完登祝いでありきたりの安いシャンパンをプラスティックのカップにそそぎみんなで飲んだ。
信じられないほど美味しかった。
喉の奥で弾ける炭酸の刺激を感じながら、こんなお酒をみんなと一緒に飲める僕は本当に幸せだと心から思った。



それは、弱い僕もみんながいればすこしだけ強くなれることを知った最高の日。

Friends
Doraさん、Ryoskくん、ザクa.k.a.ユミ。愉快で素敵な仲間達。



The Valley days 09. Fin.




SIN on [Drive On] V10 from SIN on Vimeo.

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コメント

改めておめでとう!

a.k.a. ユミなんだw
a.a.a. ザクじゃなくて。

投稿: いーづか | 2009.11.10 08:05

いいね!いいね!!いいね~~~!!!

やっぱりやったんだ!!

おめでとう~♪

全編、かなり読み応えのある内容で
読んでるこっちまで緊張してしまった。w

で…動画
楽しみにしてますよ。w
かなり大変みたいだけど…。

投稿: しょうみつ | 2009.11.10 10:48

おめでとう!文章感動しちゃったよー

投稿: BCテレマーカーTT | 2009.11.10 13:54

> いーづかくん

改めてありがとう!
ユミはザクの別名だからねw

> しょうみつさん

やりましたよやりましたよ!
あまりにこの課題で学んだことが多くて(クライミング的なことだけじゃなくて)、文章化が大変でした。ま、まともに書ききれてませんwww
動画…ハードルが高いorz

> BCテレマーカーTTさん

まいど!
スキーもクライミングもラインの美しさが命だと思うんですよね、やっぱり♪

投稿: SIN | 2009.11.10 15:18

ムービーきたー!! かっけー

投稿: 380 | 2009.11.13 19:12

> 380さん

ほんとはキレイな方を上げたかったのですが…。
今はこれが精一杯w
どっかの機会で今回の動画をまとめたものを見せられるといいんですけどねー。

投稿: SIN | 2009.11.13 22:25

わぉ! いいもん観せてもらいました!

投稿: きくりん | 2009.12.16 07:14

> きくりんさん

いやー、最後の方はほんとグダグダでみっともない登りですみませんwww

でもDriveOnは最高に美しいラインだと思ってるので、僕にとってこの経験は一生の宝です♪

投稿: SIN | 2009.12.16 14:43

あの日あの時のあの瞬間に立ち会えた自分が本当に幸せ者だなぁと思います。

この思いは一生の宝物としたいと思います!


いや〜
マジでしびれましたぜ!

投稿: ザク(感謝) | 2009.12.22 23:59

> ザク

えーっと、約2ヶ月前のことですな。
こっちも最近の君にはマジしびれっぱなしですよwww

しかしながら、本文にもあるとおり仲間のみんながいてくれたお陰だと心から思ってますよ。本当にみんなに感謝してます。
改めて、ありがとうございました。

投稿: SIN | 2009.12.23 10:16

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