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2015.12.18

チッピングについて。

チッピングについて。

岩の形状を意図的に変化させる行為。
これにより難易度を変化させたり、あるいはルート・課題そのものを消滅させる行為。
チッピングにより生まれたホールドは文字通り人工ホールドと言えるでしょう。

最近、チッピング疑惑が話題に上ることが非常に多くなっています。
内容は、既存の高難度ボルダリング課題がグレードダウンされる形でチッピングされているのではないか、というものです。
既存ルート・課題のチッピングがフリークライミング・ボルダリングにおいてどういう行為であるかを改めて僕なりに考えてみたいと思います。
もし、チッピングって何?という方がいましたら、長文で申し訳ないのですがご一読いただければと思います。

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フリークライミング・ボルダリングの定義は登攀における前進手段として自らの肉体のみを使用することです(クライミングシューズやチョークは現代ではほぼ容認されています)。
ボルト設置、ロープの使用、クラッシュパッドの使用、プロテクションの類は前進手段ではなく、あくまで墜落時の安全確保のためです。

【スポーツとしてのルール違反】
例えばグレードダウンを狙ってチッピングを行い、登ったとしてもそれは前進手段としてホールドを変化させているので、先に述べたフリークライミング・ボルダリングの定義に反する行為ではないでしょうか。
それはルール違反と言うべきもので、記録として認められるものではないでしょう。
少なくとも僕は認めません。

【クライミング文化の破壊】
既存ルート・課題は、当たり前ですが開拓者、初登者が存在します。
岩を見つけ、掃除や整備を行い、自然が生み出した形状の中にラインの可能性を見出し、登ったのです。
既存ルート・課題は開拓者や初登者の思い、労力の結晶であり、一種の作品、文化でもあります。
そして更に再登者達の思いも重なり、その歴史そのものが既存ルート・課題の魅力にもなります。
それを意図的に変化させてしまうチッピングは、開拓者、初登者、再登者に対しこれ以上ないほど侮辱的な行為であり、そしてこれからトライするであろう人達から、その文化の共有体験を永久に強奪する行為です。
僕は、何よりもこの文化の破壊行動こそがチッピングの許されない部分だと思っています。

チッピングが愉快犯的な意図で行われるのか、チッピングした本人が登りやすくするために行われるのかはわかりませんが、何れにせよ、フリークライミングのスポーツ面、文化面のどちらも侮辱する卑劣な行為に他なりません。

人意的な変化ではなく、自然環境によるホールドの変化や、トライされることによるホールドの変化は多かれ少なかれ、早かれ遅かれどんな岩にも起こり得ることです。
それは自然物を登攀対象にしている以上、仕方のないことだし、ときにはその変化が既存ルート・課題にさらに魅力を与える場合もあります。
しかし、チッピングされた既存ルート・課題は二度と元に戻すことはできません。
自然物の中に見出された可能性は、誰かのエゴにまみれた人工物になり変わります。

もし自分の初登課題がチッピングされることがあったら…と想像するとチッピングされたそれを自分が名付けた課題名で呼んで欲しくありません。
それはもう僕の課題ではないのですから。
チッピングされたと聞いて「課題を消滅させてしまいたい」と思ってしまう初登者の心情は察して余りあります。

僕がフリークライミングを始めて15年ほど経ちました。
まだまだ未熟ですし、浅い経験でしかありません。
たかが15年程度のキャリアで何がわかる、と諸先輩方には叱られてしまうかも知れませんが、僕が始めた頃と比べクライミングジムは増え、岩場には人が溢れています。
それだけクライミングが認知され、クライミングというスポーツに親しむ人が増えたことは、素直に喜ばしい事だと思います。
しかし、人が増えた事により文化としてのクライミングの濃度は薄まりつつある様な気もします。
もしかしたら、ここ最近のチッピングと疑われている騒ぎも、この文化の薄まりから出ているものなのかも知れません。

今思えば僕は、先輩達に恵まれクライミングの文化面について見聞きする事や、学ぶ機会が多かった様に感じます。
もしかしたらそれは、今よりクライミングがマイナーだったから、人と人の距離が近く自然とそうできたのかも知れません。
昔はよかった!と嘆くことは簡単ですが、それだけではクライミングの文化はそれこそ廃れてしまうのではないでしょうか。
先輩から受け取ったものを、できることならより豊潤な文化として次の世代に伝えられる様、僕は努めていきたい。

願わくば、クライミングを愛する全ての人に、素晴らしいクライミングライフを。

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長文、拙文にお付き合い頂きありがとうございます。
上記はあくまで僕の個人的な見解です。
人一人でできることなんて、たかが知れてると思います。
でも、クライミング文化のはじっこに携わっている身として。
そして先輩達からクライミング文化を学んだ身として。
チッピングしている人が存在するのだとしたら、その人自身の為にも、二度とその様な行為を行わせない様、また新たにチッピングを行なう人が現れない様に、少しでも抑止力になればと願い、僕の考えを表してみました。
様々なご指摘、ご批判もあるかとも思います。
むしろ、その様な多様性こそ文化を豊かにしていくものだと思います。
何かご意見ございましたら、コメント、DMあるいは口頭でも結構です、僕に直接お伝えください。
可能な限りではありますが、向き合いたいと思います。

未熟者ではありますが、今後とも宜しくお願い致します。

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